品内容

小説
「恋の炎は消さないで」
木下 慎次(office119) 著

発行/発売 鳥影社
定価 (本体1,300円+税)

ISBN 4-88629-460-X C0093


目 次
プロローグ   5
第一章 「ボクノシゴト キミノシゴト」 8
第二章 「キミノナヤミ ボクノナヤミ」 21
第三章 「ゼロヘノレール 1」 30
第四章 「ゼロヘノレール 2」 41
第五章 「ゼロヘノレール 3」 61
第六章 「ボクガ火消シニナッタ理由」 81
第七章 「ヒトトシテ」 92
第八章 「ズブヌレノカラダ キリサカレタココロ」 109
第九章 「ハテシナイクラヤミ」 125
第十章 「タイセツナモノヲ マモリタイ」 142
第十一章 「逼リクル恐怖 湧キアガル闘志」 159
第十二章 「ワリキレヌキモチ タチキレヌオモイ」 183
第十三章 「傷ダラケノ戦士」 207
エピローグ   216

巻末に「作中登場難解用語解説」を掲載




〜プロローグより〜

 クリスマスイヴの横浜。市内の至るところで若者の姿が目立つ。
 磯谷区・汐見ヶ浜も例外なくにぎわい、メインストリートの、昨シーズンから始まった街路樹のイルミネーションが、クリスマスムードを一層かき立てている。
 そしてその間を通る、ただでさえ渋滞の名所である幹線道路も、ベイエリアへ向かう若者の車で大渋滞を起こしていた。
 そこに何処からともなくサイレンが鳴り響いてくる。都会ではもう耳慣れたこの音は、やはり誰も気に留めない様だ。
 渋滞のせいであろう、なかなか近づいてこなかったそのサイレン音も、次第に、ゆっくりとだが近づいてくる。
 誰もが、〈どうせパトカーだろう〉ぐらいにしか思っていなかったサイレン音も、どうもそうではないらしい。これは電子サイレンアンプとモーターサイレンの混成音だ。
「消防車、側方通過します。一般車両、左に寄せてお待ちください」
 やはり消防車の様だ。ただのサイレンアンプの電子音なら警察車両やその他の緊急車両であることが分かるが、いまだにサイレンアンプと共にモーターサイレンを実装し、街で姿を見る緊急車両といえば消防車両であろう。
 消防車の広報により渋滞車両が徐々に端に寄って行く。やがて中央の開いた部分の彼方に、散光式回転燈が放つ赤い光と共に、その雄姿を現す。
 朱色のボディーのフロントには、雪の結晶を基礎とし、日章を中心にホース、筒先、水柱を配した、銀色の消防章が輝いている。屋根の上の水色の標識燈には、「汐見ヶ浜1」と書かれていた。
 磯谷消防署汐見ヶ浜消防出張所の水槽付消防ポンプ自動車である。

 渋滞車両を横目に走り進む消防車。反射した回転燈の光が車内にも差し込み、隊員たちを赤く染めている。
 運転席でハンドルを握るのは、機関員の鵜澤俊伸消防士長だ。その横、助手席では汐見ヶ浜消防隊隊長の田淵謙治消防司令補が、警防計画のファイルに目を落としている。
 後部座席には若い隊員が三人並んで座っていた。左端が放水長の川島政英消防士長。中央には恐怖と緊張にそわそわした面持ちの新人、前野宏志消防士の姿がある。
 そして右端には、真剣な表情の他の隊員たちの中で、一際険しい顔で下唇を噛み締める隊員が座っていた。
 木下慎一消防士だった。
 それを心配そうに川島が見つめる。
 サイレン音を残し、走り抜ける消防車。その進行方向上空には、天高く、まっすぐと一直線に立ち昇る黒煙が見えた。
 まさかこんな事になるとは…、あの時は気づくすべもなかった………。


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(C)2002 木下慎次/鳥影社 ・office119